豊富なlearn japanese
本書の翻訳出版の意義はきわめて大きいと思われる。
く各章ルジュメ>(略)くコメント〉以上の紹介と最初の特徴づけから明らかなように、本書はタイムリーなばかりでなく、通貨と金融制度の理論と歴史に対する深い学識、実務についての正確な理解に裏付けられている上に、豊富なエピソードを交えた巧みな語り口が特徴で、それだけに読むものを引き付けて離さない魅力がある。
金融の専門家が読んでも恐らくは興味が尽きないと思われるが、それ以上に、関心がある一般の人々にとっても金融についての基本的知識を得ながら、現在の世界金融体制の特徴と思われる大きな矛盾について理解を深める良書であり、ピジネスマン読者から支持される内容に仕上がっている。
なお、草稿であるためか、若干の誤植や文法上の誤りが散見されるが、内容の理解を損ねるほどではない。
また訳出に当たっては、内容が高度に専門的になる部分もあるため、専門家もしくは実務家に内容・訳文をチェックして貰うのが望ましいと思われる。
[校正]出版物は基本的に著者(訳者)校正が原則だ。
つまり、自分の書いた(訳した)ものはすべて自分で責を持つ。
また、校正の期聞があればこそ、著者(訳者)は、初稿の間違いを訂正したり不足分を補ったりすることができる。
執筆同様、あだおろそかにはできない作業である。
とはいえ、どんな人間でも自分の犯したミスには気づきにくいもの。
そこで、大きな出版社であれば専門の校正部員が、小さいところであれば編集者が二重にチェックすることになる。
翻訳ものの場合、この仕事が、ときとして翻訳家予備軍にまわってくる。
他人の訳文に接することは、それがよいものであれ悪いものであれ勉強になるものだ。
校正でチェックする項目は3つある。
①誤字・脱字・訳抜け②用字用語と文体の統一③事実関係の裏付け、文章表現(その他、差別的表現などのチェックも重要だが、これは主に編集部が判断することなので、ここでは省く)校正を依頼されたら、どのルベルの校正を指しているのか、最初に確認しよう。
①は、日本語の基本的素養と注意力があれば簡単にこなせるだろう。
②は、出版社あるいは企画によって異同がある。
そこさえ知っていれば、これも機械的にこなせる。
が、③は、常識、知識、表現のセンスが問われるところだ。
それだけに勉強になる。
例えば、次のような訳文を目にしたら、あなたならどう校正するだろうか(例は、ある動物図鑑のフクロウの項目を訳したもの。
訳者は理学系の大学院修士、専門分野の訳書もある人)。
フクロウの目は球状をしておらず、そのかわりに管状をしており、頭部の中で広がっています。
このことはフクロウが動く物体を追って目を動かすことができないことを意味します。
しかし、フクロウは首を180度回転できるので、後ろをまっすぐ見ることができます。
光に対しては高感度を持ちながら、フクロウの目は色はほとんどわかりません。
どうも、なぞなぞである。
特にはじめの1文。
言語で空間や構造を表現するのがいかに難しいとはいえ、これでは何のことやら、まったくわからない。
原文の正確な理解が第一こんな訳文に当たったとき、字面だけいじって手直ししようとしてはならない。
まずは原文を正確に理解することが大切だ。
原文は以下の通り。
原文を読むと、“(外からは見えない)頭の内部で裾広がりになった管状の目"、なんとなくそんなイメージが湧く。
しかし、そんな目なんであるのか。
フクロウの目の構造を知らない者にとっては原文もまたミステリーだ。
こういうときは、すぐに百科事典や類書に当たって確認する。
この場合、古代ギリシアで「知と学芸の象徴」とされるなど古来より人々の関心を集めてきたフクロウだけに、解説書の類も比較的入手しやすい。
例えば、生物学者の飯野徹雄氏が書かれた『フクロウの文化誌(中公新書)という一般向けの本の中にも、「鋭い視覚の秘密」と題した一節の中に、フクロウの目とヒトの目の比較図が載っている。
図を見るかぎり、釣鐘状。
頭の丸い円錐といったところだ。
確かに、視神経とつながる目玉の裏側(?)に向かつて裾広がりになっている。
球ではないが、さりとて管状といっては、なんだか突拍子もなく細長い目のような印象を受ける。
どうやら、原文自体、表現に苦しんだようである。
フクロウの目(左)とヒトの目。
しはレンズ、1は虹彩、Rは網膜、Pはくし膜、Oは視神経。
「フクロウの文化誌 I氏、中公新害、1991)より。
読者は誰?読んでわかるか?ともかく、視覚的な理解はできた。
そこで、日本語表現に手を入れていく。
この際も、行き当たりばったりに手を加えるのでは、なんのための校正かわからない。
読者は誰か、日本語表現として馴染んでいるか、音読してみですんなりわかるか、といった観点からの点検が必要だ。
これは動物図鑑なので、読者の大半は子供になるだろう。
大人が読む本以上に、やわらかくこなれた表現が求められる。
そこを押さえたうえで、自然な日本語になるよう気をつけて校正してみよう。
この文章の場合は、原文自体が舌足らずに思えるので本来ならはじめの1文に大胆な補足説明をいれたいところだが、原文に忠実に同程度の文字スペースで、という条件がクライアントから出されている。
私なら次のような訳に直す。
フクロウの目の構造(*1)は球ではなく、頭の奥まで末広がりに伸びた管の形をしています。
このため(*2)フクロウは動く物体を目で追うことができません。
そのかわり(*3)首を半回転させ後ろをまっすぐ見ることができます。
光に対する感度はとても高いのですが、色はほとんどわかりません。
(*1)日本語で「目というと2次元的な印象を与える。
そのため「構造」という説明語を加えた。
(*2)このことは・・・意味します」は、英文和訳的表現。
日本語として馴染まない表現は文意を汲み取り、平易な言い回しに直す。
(*3)しかし」としては、文と文のつながりが悪い。
「でも、そのかわり」といった意味でhoweverを用いているので直す。
接続詞の使い方が下手だと、読者に戸惑いを生じさせる。
(*4)フクロウの目」の話であることはわかりきったことなので割愛。
これで、かなり読みやすい日本語になっただろう。
プロスポーツ選手が常にファンを喜ばせようとプレーするように、翻訳家も常に読者を念頭に置いて仕事をしたいものだ。
語学力を伸ばす翻訳家になるのに語学力は大学入学時レベルで、充分、述べた。
これには首を傾げる方もいるかもしれない。
この表現が誤解を生むなら、平易な文章を読み通せるだけの語学力、と言い換えてもいい。
どうして、そういえるのか。
われわれが日本語の新聞を読む場合のことを考えていただきたい。
たいていの日本人なら抵抗なく新聞を読むことができるだろうが、はたして出てくる言葉をすべて知っている人がどれだけいるだろう。
ときには読み方すらわからない単語もあるのではないか。
それでも、面白そうな記事には細部不明ながらも食らいつくし、この言葉はこういうことを意味しているのだろう、と類推しながら味わうことができる。
新聞に限らずあらゆる文章に対してこういったことを繰り返しながら、われわれは日本語に関する引出しをひとつひとつ増やしていくのである。
外国語の場合も基本は同じ。
新聞記事など平易な文章を読み通す根気と語学力さえ有していれば、後は必要に応じて辞書を引きながら未知の語実あるいは語義、規則を覚えていくだけのこと。
冴えた言い回し、固有の表現などは自然と意識の底に蓄積していくものである。
基本はあくまで興味と熱意。
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